「日本:臨床試験への参加を促す要因に関した研究プロジェクト」のご紹介
「企画特集」日本の臨床試験を巡る環境:現在、そして今後への提案- 【寄稿】韓国における臨床試験環境の最新状況: In-Jin Jang MD, PhD (ソウル大学校医科大学およびソウル大学校病院)
- 「日本:臨床試験への参加を促す要因に関した研究プロジェクト」のご紹介: アイラ ウルフ PhRMA 日本代表
企画特集:日本の臨床試験を巡る環境:現在、そして今後への提案
「日本:臨床試験への参加を促す要因に関した研究プロジェクト」のご紹介
アイラ ウルフ PhRMA 日本代表
新しい医薬品がPMDA(医薬品医療機器総合機構)から承認を受ける為には、まず、その医薬品について一連の臨床試験を経る必要があります。この臨床試験は、患者さん、医師、研究者、看護師、第三者による諮問委員会、外部の契約業者など、多くの関係者が携わり進められる複雑な過程です。安全性と、PMDAに提出する結果の完全さを求める為に、厳密な手順が定められています。一方、日本での臨床試験の実施は他国に比べて難しく、その原因には、①費用が高額になること、②手続に時間がかかること、③医師からの強力な支援が得られにくいこと、④その他の非効率さ、⑤ボランティアとしての臨床試験参加に人々の気が進まないこと、が挙げられます。
⑤の日本では人々が臨床試験にボランティアとして参加したがらない点については、その詳細は、これまで明らかになっていませんでした。しかしながら、この点は、医薬品の評価をより迅速に行い、世界で最も進んだ医薬品を日本の患者さんに提供することにより、いわゆる「ドラッグラグ」の解消を実現できる臨床試験を日本で進めるにあたって深刻な足かせとなっています。
この状況に基づき、PhRMAは臨床試験に参加する際の動機付けについて検証し、参加を妨げている主な原因が何であるかを理解する為の研究プロジェクトを開始しました。米国には臨床試験参加への動機付けに関する研究が数多く存在しますが、この重要な問題の検証は、日本ではあまり行われてきませんでした。PhRMAは、この研究を通じ、臨床試験への参加を促す手段を明らかにできるものと期待しています。この研究結果の分析が完了した時点で、臨床試験に対する態度が変化し、ボランティアとして参加する人々が増えることによって日本での医薬発見と承認が迅速化されることを期待して、PhRMAはその分析に基づく結論を厚生労働当局、医師及びその他の医療関係者、医薬品業界、及び患者さんと一般の方々に公開します。
これまでに判明した興味深い結論の一つは、臨床試験とは何か、に対する理解不足です。調査に回答した人々の半数は、臨床試験への参加によって効果と副作用が明らかでない医薬品を服用し、医薬品を指示通り厳密に摂取しなければならないことに懸念を抱いており、また、定期的に病院で受診しなければならないことが重荷であると感じています。残りの半数は臨床試験への参加によって新しい医薬品を使うことができ、また臨床試験が新しい治療法の開拓を通じて社会全体に貢献するものであると感じています。
被験者が懸念を覚えた主な理由としては、副作用のリスクと未承認の医薬品を服用することのリスクがありました。また、本来の仕事と時間的に重なること、時間を取られ過ぎること、平日に何度も病院へ行かなければならないこと、及び臨床試験が実施される場所まで長距離を移動しなければならないこと、などに伴う不便さも訴えています。臨床試験への参加をかかりつけ医が推奨していないことを懸念事項として挙げる人々もいましたが、多くの被験者は臨床試験に参加することについて医療専門家に話しづらかった、あるいは、かかりつけ医にそのことを相談することをためらったと述べています。一部の被験者はプラセボを投与される可能性を懸念として挙げました。最後に、臨床試験の存在を知って参加するか否かを考えている被験者の多くは、しばしば参加することのメリットとデメリットについて知識を持っていませんでした。
前向きな要因としては、被験者が参加を決める際の最大の要因は自らの健康を改善したいという欲求がありました。これは効果がわずかなものに過ぎないと被験者が考えている場合も含め大きな動機となっていました。次に重要な要因は無料で高品質な治療や検査を受けられること、あるいは謝礼が支払われることなどの金銭的なものでした。3番目は被験者自身のような患者のための新薬開発を通じ、社会に貢献する機会が得られることでした。さらに、臨床試験について医師からの推奨、あるいは臨床試験の専門家による十分な説明を受けたことも要因となっていました。
専門家を含む多くの人々は、日本人が臨床試験に参加したがらないのは国民全体を対象とした保険制度を通じ、妥当な費用で包括的な医療を受けることが既にできているためだと考えています。また、日本人がリスクを避ける傾向が強いことも動機付けの弱さの原因であるとも考えられています。このどちらの説明も参加意欲の低さの理由と言えるかもしれませんが、今回の調査では日本人が臨床試験に参加することを促す要因はそれらよりもはるかに複雑であることが示されています。
PhRMAは現在この調査からのデータの分析を進めており、患者さん、製薬会社、医師及びその他の医療関係者、PMDA、研究者、大学、病院、厚生労働省を含む臨床試験に関わる様々な人々にその詳細と分析結果を提供する予定です。PhRMAでは、この結果に基づき、ボランティアとしての参加を拡大することにより臨床試験を取り巻く環境が改善できるものと期待しています。最終的には、誰もが目指しているゴール、つまり世界で最も進んだ医薬品を患者さんのもとへより迅速に届けることが可能となることを願っています。

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