<今日のニュース>No.1 ダウン症では癌(がん)になりにくい理由が明らかに
ダウン症の人が多くの癌(がん)に罹患しにくい理由が、遺伝子によって説明できるとの報告が、英科学誌「Nature」オンライン版に5月20日掲載された。「今回の研究では、2つの遺伝子が腫瘍内で過剰に発現すると、腫瘍の血管を閉鎖することが示された」と、米テキサスA&M健康科学センター医学部のArthur E. Frankel博士は説明している。
ダウン症の人は、21番染色体が1本余分にあり、その分231個の遺伝子も余分にもっている。また、一般集団に比べて特定の白血病の発症リスクが高い一方で、多くの一般的な固形癌による死亡リスクは、一般集団のわずか10%にすぎない。研究著者である米ボストン小児病院のSandra Ryeom氏によると、かつてはダウン症の人は平均寿命が短いため癌になりにくいと考えられていたが、ダウン症による障害の多くが治療可能となり、十分に寿命が延びた現在でも有意な固形癌の予防効果が認められるという。
今回の研究は、米国の血管新生研究の先駆者であり、昨年(2008年)死去したJudah Folkman博士の研究を基礎としたもの。血管新生とは癌細胞に栄養を送る血管の形成のことで、Folkman氏はこの血管新生を阻害することが癌の形成を阻止するのに重要であるとの仮説を提唱した。研究グループは、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)と呼ばれる化学物質(糖蛋白質)を阻害して血管形成を鈍らせる遺伝子で、21番染色体上にあるDscr1に着目。ダウン症モデルマウスおよびヒトダウン症組織で、この遺伝子の活性が亢進していることが明らかになった。
Ryeom氏はこのことから、Dscr1が腫瘍の血管新生を抑制する上で重要な役割を演じていることが示されると述べている。Dscr1単独でもある程度の腫瘍抑制がみられるが、この作用には5つの遺伝子が関与しているという。同氏らは、Dscr1が同じ21番染色体上の遺伝子Dyrk1aとともに作用して「カルシニューリンcalcineurinシグナル経路」(腫瘍の血管形成に関与する経路)を阻害すると考えている。
しかし、この情報が癌患者にとって有用なものとなるかどうかについては疑問が残されている。血管新生阻害薬ベバシズマブ(商品名:アバスチン)の例をみても、わずかな効果しか示されておらず、副作用も認められている。ある専門家は「現在可能な技術を用いてこの遺伝子を操作することが妥当であるかどうかは疑問であり、次のステップについても考える必要がある」と指摘している。(HealthDay News 5月20日)
http://www.healthday.com/Article.asp?AID=627286
Copyright © 2009 ScoutNews, LLC. All rights reserved.

「ヘルスケアニュース」に戻る