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【シンポジウム】日本医師会とともに“超高齢社会における緩和ケアのあり方”をテーマに共催シンポジウムを開催

【シンポジウム】日本医師会とともに“超高齢社会における緩和ケアのあり方”をテーマに共催シンポジウムを開催

日時:2017年11月9日(木)午後 2:00~4:30
会場:東京都内


PhRMAは去る2017年11月9日に“超高齢社会における緩和ケアのあり方”をテーマに、日本医師会とともに、5度目となる共催シンポジウムを開催しました。

高齢化が急速に進む日本では、高齢者に対する緩和ケアのあり方が課題となっています。そうした現状を背景に今回は、我が国における緩和ケアへの取り組みの現状と課題 、また国内外における緩和ケアの先進的な事例等から、今後の緩和ケアのあり方を考えることを目的に開催しました。

当日は横倉義武日本医師会会長・世界医師会会長による、「人生の最期に向かっていく時間をいかに人間らしく尊厳を守りながら過ごしていけるのか。このことは、すべての医療者が真摯に向き合うべき重要な問題であり、また、ご家族や医療関係者等との対話を継続的に重ねることを通じて、患者さんの意思を尊重しながら、その意思決定を支援していくことも非常に重要な課題である。」という開会のメッセージで講演が始まりました。

基調講演では、国立がん研究センター先端医療開発センター精神腫瘍学開発分野長の小川朝生先生から、近年はがん治療・療養場所は外来・地域へとシフトしつつある。そのため、がん治療と並行して外来や地域でどのように在宅緩和ケアを提供すべきかが、今後の重要な課題となっており、外来や地域における緩和ケアでは、年単位での生活や社会的問題を含めてがん患者を支えていくために、地域とより密接に連携しながらの中長期的な支援が求められるとし、日本国内におけるがん緩和ケアの現状や取り組み、課題について紹介がありました。

続いて、福岡大学医学部総合医学研究センター教授の田村和夫先生、岩手保健医療大学学長の清水哲郎先生よりそれぞれ講演がありました。田村和夫先生からは、我々が目指すべきは、がん医療と支持・緩和医療の密接な連携による統合医療である。現在のところ、統合医療の対象は進行・再発がんであり、がんと診断された初期の段階からの開始が必要である。支持・緩和医療の担い手としてがん診療に携わる全ての医療者が、少なくともプライマリケア段階での基本的な緩和ケアを習得する必要がある。さらに腫瘍医と経験を積んだメディカル・スタッフによる緩和ケア、そして緩和医療専門医と緩和ケア認定看護師のチームによる専門的緩和ケアまで患者さんの必要度に応じて対応していく必要があるだろうと、がん医療と支持・緩和医療の密接な連携による統合医療の重要性についてお話いただきました。
清水哲郎先生からは、これまでの意思決定支援は医療モデルに偏り短期的なものになりがちだった。しかし、今後は英国流のACP(advance care planning:ケア計画事前検討プロセス)にならい、段階に応じた治療選択や今後のケアプラン、そして ACPも併せ含む=包括的ケア・プランニングを意思決定プロセス・意思決定支援の柱とする必要があろう。時間的経過のなかで、将来への「心づもり」が直近の対応に関する「意思決定」へと自然に変化していくことが望ましい。包括的Care Planningによる本人・家族の意思決定支援は今後、がん、非がん疾患を問わず支持的ケア・緩和ケアの核になってしかるべきであると、エンドオブライフ・ケア(EOLC)において本人の意思確認ができなくなった場合に予め備える事前ケア・プランニング(=ACP) を併せ含む包括的Care Planningについて紹介がありました。

そして、基調講演の最後となる米国がん協会行動ネットワーク アライアンス構築/慈善事業担当部門 上級バイスプレジデントのパム・トラクセル氏からは、現在、米国でもAdvance care planning(ACP)が注目されており、適切な情報を提供することで、マイルストーンについて話し合うことが叶い、患者の価値観に沿った意思決定が終末期以前できると考える。ただ、ACPには必ずしも医療費が償還されないため ACP の実施は米国にとっては大きなチャレンジでもある。患者・介護者へのサポートはまだ不十分な分野であり、患者教育やカウンセリング、そして適度な息抜き機会の提供などを通じ、今後増えると予想される在宅緩和ケアでの支援を考えていきたい。幸い、専門医のなかでも介護者、家族はケアチームの一員だという認識が広まっており、今後、米国でも介護者へのサポートがより充実してくるだろうと、米国の緩和ケアの現状そして課題について紹介がありました。

パネルディスカッションでは、日本医師会常任理事である道永麻里氏をモデレーターとして、講演を行った4名がパネリストとして登壇しました。「緩和ケア」という言葉の位置づけや、「がんと診断された時からの緩和ケア」の解釈、がん医療の地域格差について、高齢者に対する医療のあり方、超高齢社会における医療・介護の提供体制等について、壇上のモデレーターだけでなくフロアとも活発な議論が交わされ、多くの質問がよせられました。

最後に、パトリック・ジョンソン PhRMA在日執行委員会委員長の「緩和ケアは患者の治療にとって非常に重要な要素であり、我々は病と闘うと同時に一人の人間をケアしなければならない。私たちは皆人間だということを忘れずにケアすることが、患者にとってもその家族にとっても、そして医療従事者にとっても欠かせない。それは終末期医療においても変わらないことであり、重要な教訓とも言える。」という閉会の挨拶によって本シンポジウムが締めくくられました。

本シンポジウムには、医療行政に関わる国会議員、患者団体、主要マスメディア、医療従事者、製薬関連企業の関係者など約90名の聴衆が参加しました。



【シンポジウム模様】


横倉 義武
日本医師会長
世界医師会長


小川 朝生
国立がん研究センター
先端医療開発センター
精神腫瘍学開発分野長


田村 和夫
福岡大学医学部総合医学研究センター教授


清水 哲郎
岩手保健医療大学学長



パム・トラクセル
米国がん協会行動ネットワーク アライアンス構築/慈善事業担当部門
上級バイスプレジデント


道永 麻里
日本医師会 常任理事



パネルディスカッション風景


パネルディスカッション風景


パトリック・ジョンソン
PhRMA 在日執行委員会委員長