本資料は、米国研究製薬工業協会(PhRMA)が2010年11月1日(米国時間)に発表した
「MEDICINES IN DEVELOPMENT FOR Alzheimer’s Disease 2010」の抄訳です。
現在米国では、自立した生活が困難なだけでなく、自己の把握が不正確な状態になるアルツハイマー病患者が500万人余りに上っています。アルツハイマー病は、患者の精神に多大な負担を、また患者の家族に打撃を与えるだけでなく、医療保険制度に年間1,720億ドルの負担となります。この金額は、低所得世帯の子どもたちに対する学校給食費用の18倍以上に相当します。しかし、推定1,100万人に上る家族や友人の人件費は巨額な費用と思われますが、この金額には含まれていません。そして、家族や友人による無償の介護は年間約120億時間になります。
これらの驚くべき数字は、ベビーブーム世代の米国人が高齢化していくにつれ、さらに増加し深刻化すると予想されます。2010年1月に65歳を迎える初のベビーブーム世代は7,600万人に上ります。高齢者人口が近い将来大幅に膨らむということは、アルツハイマー病の罹患者の大幅増加を意味しています。
米国アルツハイマー病協会によると、アルツハイマー病を予防し、進行を遅らせ、また防ぐ新薬が登場しなければ、米国のアルツハイマー病患者数は2050年までに1,350万人へと飛躍的に増加すると推定されます。アルツハイマー病患者のケアにかかる費用も年間1兆800億ドルへと5倍に増えると考えられています。この額は国土安全保障省の今年の年間予算の約25倍に相当します。
複雑な疾患であるアルツハイマー病の有効な治療法は未だ確立していません。現在、5種類の医薬品が市販されており、患者によっては症状を一時的に抑えることができます。しかし、アルツハイマー病の予防ワクチンや治療薬、発症や重度化の進行を遅らせる薬さえないのが現状です。
一方、現在、米国のバイオ・医薬品企業の後期開発パイプラインにあるアルツハイマー病に関する98品目が、臨床試験段階または米国食品医薬品局(FDA)による審査を受けており、今後の状況の改善に期待がかかります。
ささやかな進歩であっても、アルツハイマー病患者数の増加予測(我々の行く手に立ちはだかる津波のようだとする声もありますが)を大きく変えることができます。例えば、アルツハイマー病の発症を5年間遅らせることが可能になれば、アルツハイマー病患者数は大幅に減少します。2050年には1,350万人ではなく、現状より若干増加する程度の770万人という予測になります。また、5年間発症を遅らせる治療法により、医療保険制度で負担する額を全体で4,470億ドル節約することができます。
最も重要なことは、こうした飛躍的な進歩が患者とその家族のはかり知れない負担の軽減につながるということです。毎月84万7,000人純増すると予測される世界中の高齢者にも、その影響は及ぶのです。
米国の研究開発志向型バイオ・医薬品企業は、アルツハイマー病への様々な新しい対処方を探求しています。
アルツハイマー病治療の新しいアプローチには、以下のものがあります。
アルツハイマー病治療薬の探究は、激しさを増す一方で資金的なリスクも伴っています。一つの新薬開発にかかる費用は平均で10億ドル以上、開発期間は10-15年の歳月が必要です。しかし、科学の進歩により私たちの知識は向上し、研究者はあらゆる最先端のツールを駆使しています。継続して真摯に取り組むことで、私たちはこの深刻な衰弱性疾患に罹患する危険をもつ全ての人々に優れた効果をお届けしたいと思っています。
ジョン・J・カステラニ (John J. Castellani)
米国研究製薬工業協会(PhRMA)
理事長兼CEO
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開発中のアルツハイマー病をはじめとする認知症治療薬
本報告書の内容は、業界情報筋および最新情報に基づくAdis R&D Insightのデータベースを基に作成しています(2010年10月8日現在)。記載情報は全てを網羅していない可能性があります。特定の製品に関する詳細情報は、各開発企業に直接お尋ねになるか、またはwww.clinicaltrials.govを参照ください(英語のみ)。尚、「MEDICINE IN DEVELOPMENT」シリーズはPhRMAのウェブサイト(http://www.phrma.org/medicines_in_development :英語のみ)でご覧いただけます。
アルツハイマー病をはじめとする認知症に関する情報
アルツハイマー病/認知症
出典: 米国アルツハイマー病協会 『アルツハイマー病についての正確な情報2010年版
(2010 Alzheimer’s Disease Facts and Figures)』 www.alz.org
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